We build “Medical Genomics Japan Variant Database: MGeND,” integrating various clinical and genetic information to encourage Precision Medicine in Japan.
(URL:https://mgend.ncgm.go.jp)
疾患の発症や進展、治療の奏功(効果の有無)には、遺伝子の変異が深く関わっている場合があります。例えば、がんは遺伝子の変異を伴う病気であり、がん細胞でどのような遺伝子変異が起こっているかによって、がんの種類を判別したり、適切な抗がん剤を選択したりすることができます。また、肝炎やHIV、HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス)などの感染症では、遺伝子変異の種類によって、感染のしやすさや、感染後の経過が変わってくることがあります。遺伝性の難病や、認知症・難聴と遺伝子変異との関わりも知られており、遺伝子変異を調べることで、疾患を特定し、適切な医療行為へとつなげることなどが可能となります。このように臨床データと遺伝子変異データを結びつけることにより、従来よりも正確かつ高度な個別化医療の実現が期待できます。臨床データと遺伝子変異データとを結びつけて収集・公開するデータベースは、米国NIHが運営するClinVarなど、海外ではすでに運用が開始されていますが、日本においては、疾患領域横断的かつ日本人の遺伝的特徴を反映したデータベースはこれまで提供されていませんでした。
我々は、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)の臨床ゲノム情報統合データベース整備事業「ゲノム医療を促進する臨床ゲノム情報知識基盤の構築」による支援のもと、京都大学医学研究科 奥野恭史教授、荒木通啓特定教授、鎌田真由美准教授、中津井雅彦特定准教授、小島諒介特定助教、国立国際医療研究センター 溝上雅史ゲノム医科学プロジェクト長、大阪大学 加藤和人教授、慶應義塾大学 小崎健次郎教授らと共同で、日本国内の複数の疾患領域にまたがる医療機関から臨床・遺伝子変異データを収集し、日本人の臨床・遺伝子変異データを統合的に扱うデータベースMedical Genomics Japan Variant Database (MGeND)を開発し、2018年3月16日に公開しました(URL:https://mgend.ncgm.go.jp)。
MGeNDは、「希少・難治性疾患」「がん」「感染症」「認知症及びその他」の疾患領域を対象としており、先行するデータベースに蓄積されつつある情報も活用しつつ、疾患領域横断的かつ日本人の特徴を反映したオープンアクセスのデータベースとなっています。MGeNDの公開により、疾患を横断した包括的な臨床ゲノム情報の利活用及び研究プロジェクト間のデータシェアリングの実現を目指しています。日本人の臨床・遺伝子変異デタを統合的に扱うMGeNDの構築は、日本国内におけるゲノム医療の実践、および促進に不可欠なものです。